膠原病グループは井田弘明教授、海江田信二郎講師と大学院生の日髙由紀子先生 藤本京子先生を中心に基礎研究を行っています。自己免疫性疾患においてなぜ免疫システムが破綻し、かくも多彩な病態を形成するのか?解明されていないことは驚くほど多く、患者さんは皆自らを苦しめる病気の原因を知りたいと思い、そして根治につながる治療法の確立を切望しています。井田弘明教授が長崎大学より赴任され、研究室が立ち上がり、臨床に並行して基礎研究にも力を入れています。当科の研究内容は大きく二つに分かれています。
自己炎症症候群患者から樹立したiPS細胞を用いた病態メカニズム解明
我々は原因不明の発熱、漿膜炎に伴う症状(腹痛・胸痛)、関節痛などの周期性炎症をくりかえす自己炎症症候群に注目しています。特に家族性地中海熱はMEFV遺伝子変異によるパイリンの機能異常を背景として、炎症制御機構の破綻により発症する遺伝性疾患であり、本邦にも数多くの症例が存在します。好中球の活性化を伴うため、コルヒチンによる治療効果が期待できますが、治療不応例や難治症例も数多く経験します。そのため、家族性地中海熱に対する新規治療法開発のため患者末梢血からiPS細胞を樹立し、好中球へ分化・誘導しその機能解析および活性化抑制因子の同定を目的に大学院生の日髙由紀子先生と藤本京子先生が井田弘明教授指導のもと研究を進めています。家族性地中海熱以外の自己炎症症候群においてもiPS細胞を作成し、病態解明のため研究を進める予定です。
マウス関節炎モデルにおける自然免疫系細胞の機能解析
マウスに K/BxN 血清移入関節炎もしくはコラーゲン抗体誘導関節炎を誘導し、自然 免疫系細胞おもにマスト細胞やマクロファージの関節炎における役割について解析を進めています。我々はマクロファージの機能分化(M1 炎症性 M2 炎症抑制性)の関節炎への関与について M2 CD163KO マウスを用いた解析を海江田信二郎講師を中心に行っています。マウス関節炎モデルを用いた実験可能な施設は九州内でもおそらく数施設に限られますが、当科では複数の関節炎モデルを用いた研究が可能です。動物モデルは創薬へつながる、最も臨床に近い実験手法といえるかもしれません。また自然免疫系の細胞の中でマスト細胞のリウマチ性疾患における機能解析を進めており、培養細胞を用いたin vitroの実験も行っています。
アメリカリウマチ学会(ACR)にも7年連続で演題が採択され、また日本リウマチ学会総会(JCR)では毎年3-5演題発表しています。われわれは基本的に臨床医であり、臨床の現場で感じた疑問を基礎研究で解明していく姿勢が必要とおもいます。そして膠原病疾患診療に際して病態を適切に把握するため、免疫学の勉強は避けて通れません。基礎研究をとおして、免疫を学び、そして英語論文を読み最新の知識を習得する習慣が身につきます。
我々は臨床医でありますので、我々の行う基礎研究が医学の発展に寄与し、そして成果を社会に、なにより病で苦しむ患者さんに還元することが最大の目標です。熱意ある若い先生方が自己免疫に興味をもたれ、私たちのグループに参加していただけることを希望します。
All rights are reserved by Department of Medicine, Division of Respirology, Neurology, and Rheumatology, Kurume University School of Medicine, 2013.